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更新:2009年7月13日 10:40ビジネス:連載・コラム

夏野剛のネオ・ジャパネスク論

若者にチャンスを オジサンに勇気を 日本には新陳代謝を

 いつの時代になっても、「近頃の若者は…」という声は絶えない。古代エジプトの碑文にもそのような記述があるほどだから、今に始まったことではない。最近の若者に対しても、覇気がない、やる気がない、夢がない、教育されてない、などと苦言を呈するオジサンは多いが、本当にそうだろうか。(夏野剛のネオ・ジャパネスク論)

■音楽・スポーツ…世界で輝く若者

 今、日本人の若者は国際的な場で今までになく輝いているように思える。盲目の日本人ピアニストの辻井伸行さんが国際コンクールで賞を取り、日本人若手バイオリニストの樫本大進さんがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに内定したというニュースが流れたが、クラシック界における日本人若手演奏家のプレゼンスは相当に高い。バイオリンだけでも五嶋みどりさんや竹澤恭子さんに始まり、近年では神尾真由子さんに至るまで世界レベルのアーティストがごろごろいる。

メジャーリーグで活躍する日本人プレーヤーはたくさんいる=手前は松井秀喜選手、奥はイチロー選手〔共同〕

 スポーツはなおさら。フィギュアスケートの表彰台には必ず浅田真央さんや安藤美姫さんら日本人選手がおり、イチロー選手や松井秀喜選手を始め、メジャーリーグで活躍する日本人プレーヤーがたくさんいる。サッカーも着実にレベルは上がり、水泳や体操も世界一を狙える。一昔前の根性主義スポーツ時代では考えられなかったような快挙である。

 音楽やスポーツだけではない。アフリカの小国に青年海外協力隊として乗り込み、エイズ撲滅のために作曲した自演の曲が大ヒットとなった若者。アフガニスタンで活動するNPOの若者。フランスで料理の修業を積む者。ブラジルで起業を夢見る者。中国に単身乗り込み、デビューを狙うアイドル。いまどきの若者の中には、一昔前の語学留学や遊学とはまったく異なる挑戦をしている人が多い。

■ビスネスでも台頭

 一方、国内でがんばっている若者も多い。私は今年度から、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)の「未踏プロジェクト」という、若い世代の開発者を支援するプログラムのプロジェクトマネジャー(PM)になり、上半期に全124件の審査をしたが、そのクオリティーの高さには驚かされた。応募者の多くは大学、企業に籍を置きながらも、自分の信じるソフトウエアの開発をしている30代以下の若者。PMとして彼らの巣立ちを助けるのが本当に楽しみである。

 若い経営者も増えた。2000年代前半のベンチャーバブルのころに台頭した経営者は確かに玉石混交だったが、バブル崩壊後の厳しい環境を生き残った、あるいはそれを踏み台にして大きく成長した30代、40代経営者もいる。いまどき、50代にならないと経営者は務まらないなどと公言できるオジサンはいないだろう。

■オジサンこそぼやきの対象

 むしろ「近頃のオジサンは…」と言わざるを得ないことのほうが増えているようだ。ITに関する知識の低さは本当に問題である。議論にならないレベルである。知らない、わからないということを公言してはばからない経営者や政治家も多い。実務において、ITなくして仕事はまったく進まなくなっているのにもかかわらずである。ケータイの使い方になるとなおさら。もう住んでいる世界が違う、あるいは遅れまくっているとしかいいようのないような会話が多い。

 本コラムでも再三にわたり指摘してきたが、大衆薬(一般用医薬品)のネット販売の議論、テレビとネットをめぐる話、子供のケータイ規制問題などで私が遭遇したオジサン、オバサンたちの話は、20年以上前の常識を振りかざして、昔に戻ろう、と言っているようにしか聞こえないことも多かった。

■若い世代の環境は最も劣悪

 もちろんダメな若者もたくさんいるだろうし、世の中の動きを的確に捉え、英断を下すことのできる50代リーダーもたくさんいる。ただ、若い世代に与えられているチャンスは圧倒的に限られていると思う。現在の就職の難しさ、資金調達の困難さ、経済情勢の厳しさは、これまでの日本の若い世代に与えられてきた環境としては最も劣悪であろう。

 一方で、判断を先送りにしたり、変革や進化への熱意を失ったりしているオジサンが社長の座につくことはいまだに例外ではない。つまり、若者にもっとチャンスを与えることが、機会均等になるだけではなく、日本の成長につながるのではないかと私は考えている。

 え、どうやってチャンスを与えるかって?

 それはひとえに古い世代の方々が勇気を持って、若い世代に機会を分け与えるしかないでしょう。勇気を持って、自分のやり方が通用しないことを認め、一歩引いて新しい世代に任せることでしょう。

■低迷する業界に古いリーダーが多い

 特に大会社の経営層の方々と話をしていると、いやあ、新しい技術のことはよくわからなくって、とか、いまどきの消費者は何を考えているのかわからん、とぼやいている人も多い。自分が相手にしているマーケットや技術がわからないというのは、さぞやつらいお仕事でしょう。もういいんじゃないですか。十分働いてきたでしょう。今ご自分の担当している事業の中身、特に技術とか消費動向が理解できない方、あるいは頭では理解できても、感覚としてしっくり来ない方。さっさと若手に譲りましょう。

 現在低迷している業界、会社を見ていると、共通していえることは、15年以上前のリーダーたちがいまだに最前線に立っている。もちろん何割かそういうリーダーがいてもいいが、半分以上は新陳代謝しないと、産業や組織は活性化しない。政治にも、企業にも、もっと新陳代謝を導入して、日本を活性化しよう!

[2009年7月13日]

-筆者紹介-

夏野 剛(なつの たけし)

慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授、ドワンゴ取締役

略歴

 1988年早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。95年ペンシルバニア大学経営大学院卒。96年ハイパーネット取締役副社長。97年NTTドコモ。榎啓一氏、松永真理氏らと「iモード」を立ち上げた。2005年ドコモ執行役員マルチメディアサービス部長。08年にドコモを退社。
 現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、SBIホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、NTTレゾナントの取締役を兼任。ドワンゴでは動画共有サービス「ニコニコ動画」の黒字化・国際化・一般化を進めると宣言。特別招聘教授を務める慶応大学政策メディア研究科では「IT革命」をテーマに講義する。

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