更新:2008年9月29日 09:01ビジネス:連載・コラム
次世代IT産業論考(浜口友一)ドメスティックな情報サービス産業の将来、国際化への道
情報サービス産業は、売上高約16兆円超、従業員82万人の規模を誇る巨大産業である。我々の提供する情報システムやソフトウエアなしには、もはや企業活動や国民生活が成り立たなくなりつつあるのは事実である。しかしながら、産業としての存在価値が今ひとつ高くない理由に、輸入が多く輸出がほとんどないという現実がある。 ■製造業は国際的にも強いのに、なぜソフトは駄目なのか 多くの人々がソフトウエア開発に製造業的イメージを抱いており、製造業は世界で強いのにどうしてソフトウエアは駄目なのかという疑問を持っている。それでは、日本の製造業の強みとは何だろうか。ニーズあるいはシーズからの技術開発力、生産技術や生産性の高さ、そして世界をマーケットとして捉えている視点だろう。 わが国のソフトウエア開発を見ると、品質や生産性の面では諸外国と比較しても決して引けをとらない。ただ、ソフトウエアの開発は、製造業のように試作を重ねて製品開発を行い、それを生産ラインにのせ大量生産を行うわけではない。大抵は一度開発をするだけで製品が完成する。原材料や在庫もなければ、生産設備も要らない。ソフトをパッケージとして大量販売する場合も、電子的なコピーで済むので生産コストはほぼゼロである。つまり、製造業とは根本的に異なるのだ。 加えて、日本のソフトウエア産業の外国との決定的な違いは、以前にも触れた通り、受託ソフトウエア開発の比率が圧倒的に高いことだ。日本人のきめ細やかなニーズへの適応、欧米ソフトウエア企業によるグローバル市場の寡占など様々な要因があるが、結果として日本のソフトウエア産業には製造業の強みのひとつであるニーズやシーズからの技術開発力が欠けることになってしまった。 ソフトウエアは電子素子の集積回路のなかに形成される仮想的なものである。ロジックさえ組めれば大体のことは実現できる。ハード性能や開発効率の差は多少あれども、基本的な競争環境は万国同じである。つまり、差別化のポイントとなるのは、どの様なソフトウエアを作るかのアイデアそのものである。 振り返ってみると、筆者自身もこれまでの仕事は受託システムの開発が中心であった。その過程で汎用的なソフトウエアもある程度作ってきたが、いずれも特定業界向けのものであり、販売できる範囲は限られていた。自らが企画したアイデアでソフトウエアを開発して、世界に売り出そうとの考えはなかった。 受託開発の副産物として開発されたソフトウエアか、最初から大きな市場を前提として企画したソフトウエアか。更には国内だけをマーケットと見るか世界をマーケットと見るかで、決定的な違いが出る。 グローバルに成功している企業の道を踏襲するなら、まず世界をマーケットとして捉え、それに通用する製品やサービスを発案し、開発資金を投資家から集める交渉力が必要である。これこそまさにベンチャーである。この産業に欠けているのは、世界を相手にするベンチャー精神なのかもしれない。 日本製のソフトウエアでも、グローバルな市場を獲得しているものはある。任天堂に代表されるゲームは、まさにクリエイターのアイデアとその実装技術の高さで世界を席巻している。自動車の世界では、安全性の高い駆動制御やハイブリッドエンジンなど製品トータルの価値を向上させるのに、組み込みソフトウエアが不可欠な武器となっている。これらの分野では、今後も日本製ソフトはますます強みを発揮していくだろう。 ■企業向けソフトウエアの分野で日本はグローバルに戦えるか ● 関連リンク● 記事一覧
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